「神経発達症」(発達障害)は生まれながらの脳の機能の偏りにより日常生活に様々な支障を及ぼす状態で、生涯にわたる支援が求められることが少なくありません。代表的なものは、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などで、その他に吃音やチック症なども該当します。
ここでは、代表的な神経発達症と主な特性、それに対する薬物療法について紹介します。
■自閉スペクトラム症(ASD)
〇対人関係やコミュニケーションの困難さがある(話し言葉が出ない/反響言語が多い/例え話や冗談が通じない/一方的に話し続けるなど)
〇こだわりが強い(ぐるぐる回る、ジャンプなど同じ行動を繰り返す/特定のものに執着するなど)
■注意欠如・多動症(ADHD)
〇不注意(気が散りやすい/興味がない・意欲がないものには注意が持続しない)
〇衝動性(待つことや我慢が苦手)
〇多動性(落ち着きがなくじっとしていられない)
■学習障害(LD)
〇読字障害
〇書字表出障害(文字が読めても正しく書けない)
〇算数障害
【主な薬物療法 自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)】
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)への対応は、環境調整や行動面からのアプローチがまず試みられます。しかし、日常生活の改善が十分でない場合には、薬物療法が試みられるケースがあります。主な薬剤をまとめました。
●中枢神経刺激薬
◎メチルフェニデート塩酸塩(先発品名:コンサータ)
主な適応:ADHD
◎リスデキサンフェタミンメシル酸塩(先発品名:ビバンセ)
主な適応:小児期(6歳以上~18歳未満)におけるADHD
●非中枢神経刺激薬
◎アトモキセチン塩酸塩(先発品名:ストラテラ)
主な適応:ADHD
◎グアンファシン塩酸塩(先発品名:インチュニブ)
主な適応:ADHD
●非定型抗精神病薬(セロトニン・ドパミン拮抗薬)
◎リスペリドン(先発品名:リスパダール)
主な適応:小児期(5歳以上~18歳未満)のASDの易刺激性
●非定型抗精神病薬(ドパミンD2受容体部分作動薬)
◎アリピプラゾール(先発品名:エビリファイ)
主な適応:小児期(6歳以上~18歳未満)のASDの易刺激性
●メラトニン受容体、作動性入眠改善剤
◎メラトニン(先発品名:メラトベル)
主な適応:小児期(6歳以上~16歳未満)の神経発達症に伴う入眠困難
神経発達症(発達障害)における薬物療法は、子どもが日常生活を送りやすくするために必要に応じて行う補助的な役割を担うものです。ASDであれば、易刺激性の発現の程度を和らげ、こだわりへのアプローチや環境調整を行いやすくするために用います。ADHD治療薬は本人の特性に合えば、非常に生活を改善するものになります。しかし、神経発達症はADHD単独あるいはASD単独といった様相ではなく、混在した特性がみられることが少なくありません。ADHD治療薬でどの程度まで治療できるかといった確認や、薬が合わずに逆に不安定になってしまった際には医師や薬剤師へ迅速に相談し、服用を中止するといった対応を家族が行なえる余力があるかも考えて薬剤選択する視点も必要です。
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