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ST松尾

AACとは?

AAC(Augmentative and Alternative Communication;拡大代替コミュニケーション)とは、話すこと・聞くこと・読むこと・書くことなどのコミュニケーションに障害のある人が、残存能力(言語・非言語問わず)とテクノロジーの活用によって、自分の意思を相手に伝える技法のことです。AACの技法の種類には、大きく分けてノンテク、ローテク、ハイテクの3つがあります。


○ノンテク

表情や身振り手振りなど物を使わないコミュニケーション技法です。言葉の通じない海外でも身振り手振りでコミュニケーションをとることができるように、ボディ・ランゲージは立派なコミュニケーション方法となり得ます。


・瞬きによるYes/Noサイン

瞬き1回なら『Yes』、瞬き2回なら『No』、瞬き3回なら『もう一度』のように回答のサインを決める。


・五十音の読み上げ(口述文字盤)

支援者が五十音を読み上げ、適切な箇所でサインを送り文字を確定する。(例:あ、か、さ、た(瞬き)→た、ち、つ、て(瞬き)→『て』に確定)


・空文字(空書)

空中で文字を書く。相手の掌に書く場合もある。


・視線

要求する物を見つめる。(例:テレビが見たいときにテレビをじっと見つめる)


・身振り

身振り手振りで意思を伝える。視線や口型を併せることで支援者に伝わりやすくなる。


○ローテク

文字盤やコミュニケーションボード、筆談ボードなどのローテクノロジーを用いるコミュニケーション技法です。


・文字盤

五十音表を載せた文字盤です。手軽にオリジナルのものが作れるのが特徴です。指で直接文字を選んだり、手や口に棒を固定して文字を指したりして一文字ずつ意思を伝えます。


・透明文字盤

透明なアクリル板などで作った文字盤です。筋萎縮性側索硬化症や閉じ込め症候群(ロックドインシンドローム)など、四肢の機能が障害されている方に対して有効なコミュニケーション方法です。

対象者と支援者が透明文字盤を挟んで向かい合います。対象者が伝えたい文字を見つめて、支援者が視線の先を読み取りながら文字盤を動かします。対象者と支援者の視線が重なった先にある文字が目的の文字です。この方法を繰り返しながら、一文字ずつ想いを伝えてきます。


・コミュニケーションボード

文字・写真・イラストなどで普段使う会話例を掲載して作成します。手作りでオリジナルのものを作れるのが特徴です。載せる内容も重要ですが、物事をカテゴリー分けや階層化して作成すると伝えたい文字が探しやすく使いやすいコミュニケーションボードになります。

また、ネット上では文字盤やコミュニケーションボードの作成方法を公開したり、無料でダウンロードできるサイトも多く存在します。


・筆談ボード

筆談ボードは持ち運びに便利なメモ帳を使ったり、書いてもすぐに消せる携帯用ホワイトボードを使ったりします。


○ハイテク

パソコンやタブレットなどのハイテクノロジーを用いるコミュニケーション技法です。


・意思伝達装置

単体の意思伝達機器として開発されたレッツ・チャットやパソコンに意思伝達ソフトをインストールしてワンスイッチでパソコンを操する伝の心や話想、ハーティラダーなどが有名です。

ローテクと比べて、文字をデータとして残すことができること、一人でも文字を綴れること、メールやインターネットを活用できることなどといった利点があります。また、環境制御機能を追加することもでき、テレビやエアコンなどの家電製品をパソコンの画面上で操作できます。

しかし、習熟に相当の練習が必要なこと、機器が高価なこと、パソコンの知識が必要なことなどがローテクと比べて欠点となります。購入に際しては、補装具制度の『重度障害者用意思伝達装置』に該当します。市区町村に申請することで費用の一部を補助できる場合もあります。


・VOCA

VOCA(Voice Output Communication Aid)とは、スイッチを押すとあらかじめ登録しておいた声が出力される携帯型音声出力コミュニケーション機器のことです。


・アプリ

近年はICTの普及によりスマートフォン・タブレットを用いたコミュニケーションアプリも注目されるようになりました。

有料なものから無料なものまで様々なものがあります。


『私たちが使って便利だと思うものは、障害を持つ方が使っても便利』ということを意識することが大切です。なにげなく使っているものでも使い方をちょっと工夫することで活用方法は無限に広がります。AACは自分の意思を伝える手段を確立するものです。“特別なものを用意しなければ”と考えるとハードルが上がってしまいます。まずは身近なものから“試してみよう”という姿勢から有効な手段は見つかることもあります。


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