喀痰吸引とは、高齢による体力の低下や病気のため自力で痰や唾液などの分泌物を吐き出せない方の手助けをして吸引器などを使用し、体の外へ痰を排出することです。
人は空気中のホコリや菌などの異物を無意識に吸いこんでしまいます。
健康な人はこの異物が体内に入り込まないように、吸い込んだ異物を痰に絡ませ、咳などで体外へ排出させます。
自分で痰や唾液を吐き出すことが難しくなると、痰が気道内に溜まり、呼吸が苦しくなり、窒息や呼吸困難を引き起こす原因となります。
また、細菌なども多く含まれているので、誤嚥性肺炎など、病気につながることもあります。
吸引は、痰を取り除いて呼吸がしやすい状態にするだけでなく、肺炎などの病気の予防という意味もあります。
自宅で行う吸引器を使用した喀痰吸引について説明していきます。
●喀痰吸引の種類●
喀痰吸引の方法として
①口腔内から吸引する方法、②鼻腔内から吸引する方法、③気管カニューレ内部から吸引する3つの方法があります。
今回は口腔・鼻腔吸引について説明していきます。
●吸引時の準備物●
吸引器
吸引カテーテル
アルコール綿
水道水の入ったコップ
カテーテルが入る空の容器、もしくは消毒液をいれた容器
(その他に感染予防として、ゴーグル、マスク、エプロンなど使用します。)
●吸引の仕方●
①手洗いを行い、手袋を装着します。
② 吸引する事を声掛けをして体位を整えます。
ポイント
吸引される本人へ必ず声掛けを行います。意思を確認し、痰吸引を行う環境・体位を整えます。仰向けにして、少し顎を上げるとチューブが入りやすくなります。このとき、口の周囲、口腔内、鼻腔内を観察し、出血や腫れ、乾燥などがないか観察しましょう。
③吸引カテーテルと吸引器本体のチューブにつなぎます。
ポイント
吸引カテーテルを取り出し、吸引器本体のチューブにつなげます。
カテーテルを取り出すときに、先端が周りの机や壁などにぶつかり不潔にならないよう注意が必要です。吸引器本体のチューブに接続するときは、しっかりと奥まで挿入し外れないようにします。
カテーテルの太さは、0~1歳6Fr、1~2歳8Fr、2~10歳10Fr、12歳以上12Frと言われていますが、人の鼻の大きさは個人によって異なる為、医師、もしくは看護師に確認しましょう。
④吸引器の電源を入れ、吸引圧を合わせます。
ポイント
吸引器の電源を入れます。コップに入れた水を吸引できるかどうか確認しましょう。水を吸うことで、カテーテル内に水が通って滑りがよくなります。薬液につけて保管していたカテーテルを使用する場合は、水を吸うことで内部を洗い流します。アルコール綿でカテーテルの根元から先端までを消毒し、吸引圧を合わせます。(成人の場合150Torr前後、小児80~120 Torr、新生児60~80Torrが適正と言われていますが、主治医に確認しましょう。)
⑥カテーテルを挿入します。
ポイント
カテーテルの先端から大人の場合、約10cmあたりを持ち挿入します。持ち手は親指、人差し指、中指の3本を使って、ペンを握るように持ちましょう。もう一方の手の親指でカテーテルの根元を押し曲げるようにして、吸引圧がかかっていない状態でゆっくりと挿入します。
鼻腔から気管内へ進める際は、咳をさせ、カテーテルを引いたり、進めたりしながら入れていきます。無理やり入れる、何度も行うなどすると鼻の粘膜が傷つけられ、出血の原因になるため注意してください。カテーテルが入りにくいときは、反対側の鼻腔で行ってみるとよいでしょう。
⑦痰を吸引します。
ポイント
カテーテルの根元を押さえていた親指を放し、左右にゆっくり回転させながら痰を吸引します。たんの吸引は、約10〜15秒以内を目安に行いましょう。吸引した たんの色や量、粘さをチェックしてください。痰が硬くて引けない場合は吸入すると痰が柔らかく引きやすくなります)
⑧カテーテルをゆっくり引き抜きます。
ポイント
カテーテルをゆっくり動かしながら引き抜いていきます。このとき、呼吸が苦しくないかどうか、爪や唇の色に異常がないかをチェックしてください。
⑨カテーテルを洗浄して外します。
ポイント
カテーテルの外側についた 痰をアルコール綿で拭き取ります。その後、コップに入れた水を吸い、カテーテル内側を洗い流します。カテーテルに痰が残っていないことを確認したら吸引器の電源を切り、吸引器本体のチューブからカテーテルを外してください。
●カテーテルの保管について●
カテーテルは、複数回使用することが可能です。
以下のいずれかの方法で保管しましょう。
①乾燥して保管する方法
空のコップに入れておくなど、乾燥した状態で保管します。
②薬液に浸して保管する方法
消毒液の入った保存容器にカテーテル全体を浸して保管します。
消毒液は毎日交換しましょう。
●まとめ●
吸引の手技を始めて行う方は、苦手意識が多い人が多いです。手技を行ううちに短期間で行えるようになりますが、慣れたころに事故の発生率が高くなり、重篤な疾患に発展することもあります。基本操作を常に意識しましょう。
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