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NS吉岡

終末期の体の変化

今回は、終末期における体の変化についてお話ししていきます。疾患や病状などによって、現れる症状には個人差があります。体の変化が亡くなる数週間前からゆっくりと出現する場合もあれば、亡くなる数時間前に急激に出現する場合もあります。亡くなる数時間~数日以内に出現する可能性が高い徴候についてお話ししていきます。


■意識


死が近づくと、腎臓や肝臓など臓器の機能が低下します。電解質の異常や体内の酸素量も低下するため、意識レベルは低下していきます。また、脳の働きも低下していくため、幻聴や幻覚等のせん妄を引き起こす場合もあります。

→ 無理に起こさず、寝かせたままで大丈夫です。話したい事があれば、傍に寄り添い先送りせず伝えてあげて下さい。


■呼吸


チェーンストーク呼吸といって、呼吸が徐々に増大と減少を繰り返し、最も減弱したときにしばらく呼吸が止まるような呼吸が見られます。このように、呼吸が不規則になり、一時的に止まることもあります。下顎呼吸といって、顎をあげて肩を動かしながらの呼吸は、数時間でお別れが訪れるサインです。

→ 横向きの姿勢にしてあごを下げると呼吸しやすいです。また舌根沈下といって、舌の根元が咽頭に落ち込んで気道を塞いでしまう事があるため、肩の下にタオルやクッションを入れて、首を後屈させる(肩枕)も有効です。

呼吸時に「ゴロゴロ」「ゼイゼイ」といった音が聞かれる死前喘鳴(気道内分泌物の貯留によって生じる)がみられる事があります。昏睡または意識低下していることが多いため、ご本人は苦痛を感じていないと考えられています。

→痰がつまって苦しいのではないか?と心配されるご家族も多くおられますが、ゴロゴロの原因は痰ではないため、吸引してもなかなか改善されません。吸引による苦痛が生じてしまうことがありますので、注意が必要です。死前喘鳴に対しては、基本的には見守ることがケアになります。あまりにも気道内分泌物が多量であるときは、輸液を中止したり抗コリン薬(気管支を拡張させるお薬)の慎重投与をすることもあります。


■循環、血圧


心臓が元気な間は、血圧を上げるために心拍数が増えて、血圧を何とか維持しようとします。しかし心臓の動きもだんだんと弱まります。心臓が疲れていく事によって、心拍数も減少し、それとともに血圧も低下し測定困難となります。そのため、体中に酸素が行かず循環障害となり手足の先から紫色に変化します。(チアノーゼ)

→ チアノーゼは血液の流れが悪くなって起こるので、痛みはありません。掛け物や室温調整、湯たんぽなどで保温したり、優しくマッサージしてあげるのもおすすめです。

■食事


徐々に口からの摂取が難しくなります。消化吸収機能が低下するため、だんだん食べられなくなります。

→栄養面はあまり考えなくて大丈夫です。本人が食べたいときに、食べられるものを食べさせてあげる事が大切です。


■排泄


便や尿の排泄機能が低下するため、失禁が増えてきます。

→おむつで対処しましょう。おむつ交換の際にワセリンやクリームなどを塗ると皮膚トラブルの予防になります。

死期が近づくと唇や皮膚が乾燥し、尿が出なくなってきます。

→口腔内はスポンジやガーゼで湿らせます。唇にはリップクリームを塗ってあげるのもおすすめです。


個人差はありますが、死が近づくとこのような身体変化が現れます。分かってはいても、いざ最後の時を迎えるとなると、不安や焦り、悲しみなど色々な感情が生まれてくると思います。視て、聴いて、触れて、状態を把握しておくが大切です。

別れが間近になると、呼びかけに反応しなくなってきます。返事がなくても、聴覚は最後まで保たれているといわれています。最後までご本人様に寄り添い、お名前を呼んだり、伝えたい事や感謝の気持ちなど伝えてあげて下さい。


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