認知症の症状は中核症状と行動・心理症状(周辺症状/BPSD)に分けられます。周辺症状には、対応が難しい症状があります。
●被害妄想(もの取られ妄想など)
認知症患者の被害妄想は、比較的多い症状の1つです。
・お金を盗まれた
・家族に虐待されている
・泥棒が家に入る
こうした被害妄想を訴えることがあります。認知症患者にとっては、助けを求める意味合いで訴えている可能性があり、認知症の症状による周囲への不満や、苦しみが表れている可能性があります。被害妄想への対応は、否定せずに聞くこと、患者の感情に接すること、こうした対応を行います。妄想であるとしても、まずは否定せずに患者の訴えを聞き、一緒に探し、できれば本人が見つけられるようにします。共感することで、被害妄想が消えることもあります。また、被害妄想で訴える内容には、事実とは異なることで、重要な意味合いはなくても、「気持ちを理解して欲しい」「話を聞いて欲しい」といった気持ちが隠れていることが多いです。
●徘徊
認知症患者の徘徊による行方不明者は増加傾向にあり、社会問題にもなっています。認知症患者に歩く能力があるうちは、徘徊の症状は起こる可能性があります。認知症患者が徘徊する理由は、
・家に帰ろうと思って(探している家が過去に住んでた家だった)
・道が分からなくなった
・思っていた家と場所が違った
こうした理由があり、周りからは理解出来ないことや、現実では考えられない状況にあたると、「徘徊」とみなされてしまいます。ただ、健常者が歩いて外出をすることと、認知症本人の「徘徊」では同じような感覚なのです。徘徊を止める対応は非常に難しいことです。家の鍵をかけたり、閉じ込めたり、靴を隠したり、といった対応はありますが、こうした対応をしても、裸足で出ていこうとしたり、2階から出て行こうとしたりして、事故に繋がる可能性もあります。閉じ込めることだけに目を向けず、リスクのあるひとり歩きをさせないようにして、見守りのある外出が出来るような支援が重要です。
●弄便
認知症患者にまれに見られる行為ですが、介護者にとっては非常に厄介な問題です。認知症患者は、症状の進行とともに脳機能も低下し、においが感じにくくなります。そのため、便臭が酷くても本人は気にならないことが多いのです。弄便の原因として考えられるのは、いくつかの理由があります。
一昔前の記憶で、昔は和式トイレで用を足していたため、床を汚すことがあり、床を汚したら掃除をしなくてはいけないという記憶が残っている場合、本人は「掃除をしなきゃ」と感じている可能性があります。ただ、自分で掃除をすることがうまくできず、ますます汚してしまったり、汚れた手を綺麗にするために壁などで拭いてしまった可能性もあります。
また、オムツにした便に不快感を感じ、手を入れたら手についてしまい、同じように手を綺麗にしようとして周りで拭いたということもあります。
弄便を止めるためには、まず排便のコントロールをするようにしましょう。トイレ習慣を確認し、習慣づけることや、ポータブルトイレの設置、オムツ交換のタイミングを増やすといった対応を行います。
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